早い者勝ちの土地共有持分放棄

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早い者勝ちの土地共有持分放棄
2018年1月10日投稿

記事の概要
いらない物は捨てたくなる。使えない土地も同じ。

いらない物をわざわざ買うことはないとして,相続してしまうことは十分にありうる。
所有権や共有持分の放棄は自由であるとされている,共有持分については民法にも規定がある。
しかし,土地の単独所有権の放棄は登記できない。
数人で不動産を共有している場合,一人ずつ放棄していく,最後まで残った者は放棄できなくなる。まるでババ抜きwwwww
そこで,いらない土地は他の共有者より先に放棄すべきだというのが結論。
以下,詳しい説明をする。

      いらない物は捨てたくなる・・・

いらない物
利用価値も売却価値もないものがある,人口減少が原因か,近年,地方の土地建物についての相談が増えている,固定資産税を支払う必要が生じているだけで,マイナス資産だというのだ。
誰も買わないし,役所も寄付を受け付けない。

      建物は壊すことができるが,土地は物理的に壊すことも捨てることもできない。

単独所有権・共有持分の放棄
理論的には所有権,所有権共有持分は放棄ができる。共有持分については民法255条に規定がある。「共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する」とされている。単独所有権の「放棄」は民法に規定がないが,これも理論的には可能とされている。
それでは,放棄すればよいのか?共有持分についてはそのとおりだが,単独所有の土地は事実上放棄できない。まずは単独所有権の放棄から見ていく。

単独所有権の放棄
「放棄」の方法であるが,単独行為であり,特定人に対する意思表示を必要としない。占有の放棄その他によって放棄の意思が表示されればよい。意思表示の相手が必要だとすると誰を相手にするかという問題がでてくるが,これはクリア。これはよいとして,放棄を第三者に主張するには登記をしなければならないという問題がある。民法177条は「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない」と規定する。放棄についても登記をしなければ,相手にされないのである。

      それでは登記できるのであろうか。

単独所有権放棄の登記について
民法239条2項は「所有者のない不動産は、国庫に帰属する」と規定する。
そうすると国に移転登記するのか。また,所有権の放棄の登記は国の所有権に変更するのではなく登記抹消すればよいだけではないかとも考えられる。国庫に属する未登記の土地というものがあってもおかしくもなんともない。
ところが,法務省民事局の登記関係先例,昭和41年6月1日付1124号照会とそれ対する同年8月27日付1952号回答は・・・
(照会)
  一,不動産(土地)所有権の放棄は,所有権者から一方的に出来るか。
  二,もし所有権放棄が可能であれば,その登記上の手続方法はどの様にするか。
(回答)
  一,所問の場合は,所有権の放棄はできない。
  二,前項より了知されたい。

       所有権放棄の登記ができない!!!

       共有持分の場合は,ど,ど,ど,どうなるの?

共有持分の放棄
前記の通り,共有持分の放棄は民法255条によりその持分は他の共有者に帰属するとされている。

共有持分放棄の方法
共有持分の「放棄」の方法は単独所有権と同じで単独行為で相手方を必要としないはずであるが,地上権の放棄について土地所有者に対する意思表示が必要だという判例(大審院明治44年4月26日判決「所有権を有せざる者に対してなしたる地上権の放棄はその真の所有者との間においては何らの効力を生ぜざるものにして・・・」)があるので,他の共有者に対する意思表示をする方法での放棄が無難。

共有持分放棄の登記の方法
登記の種類は移転登記によることになる。実体法上は放棄により持分が消滅し,その持分は他の共有者に「移転」するのではなく,他の共有者がその持分を「原始取得」するとされている。しかし,「移転登記」をする。
「土地の共有持分の放棄がされた場合、放棄により共有持分は一旦消滅するから、このような共有持分放棄による他の共有者又は国の持分権取得は、実体法上は原始取得であると解されるが、登記法上は、この場合には、いわゆる移転的承継取得の場合と同様、一定の原因により権利が一人の帰属を離れるのと同時に他人に帰属するという関係にあり、右のような状態を登記簿上に正確に表示することが不動産登記法の本来の法意に合致すると解すべきであるから、登記手続としては持分権放棄を登記原因として、持分権の放棄者から他の共有者又は国への持分権移転登記手続をすべきものと解するのが相当である(最高裁昭和四四年三月二七日第一小法廷判決・民集二三巻三号六一九頁参照)。」(名古屋高裁平成9年1月30日判決)

       共有持分の場合はなんかできそうだ・・・

登記申請方法
土地の登記は登記によって利益を受ける登記権利者と登記によって権利を失う登記義務者の共同申請による。共有持分の放棄では放棄するものが登記義務者,放棄しない者が登記権利者となる。ところが,登記権利者が協力しないと登記できないことになる。
通常は登記義務者が協力せず,登記権利者が登記義務者に対して登記請求訴訟を提起して,勝訴判決を得て登記をする。
それでは,登記権利者が協力しない場合はどうなるか。
その場合は,登記引取請求訴訟を提起する。

       登記引取請求??

登記引取請求に関する東京地方裁判所平成28年12月16日判決
「原告が被告に対し、原告持分を放棄する旨の意思表示をすることにより、原告持分は、他の共有者である被告に帰属することになる。
  そうすると、原告は、本件土地の共有持分を有していないにもかかわらず、本件土地の不動産登記記録には、原告が本件原告持分を有している旨が公示され、原告から被告への本件原告持分の移転が反映されておらず、現在の実体的権利関係に符合していないのであるから、原告は、被告に対し、不動産登記記録に公示された権利関係を現在の実体的権利関係に符合させるべく、被告に対して本件原告持分の全部移転登記手続を求める登記請求権を有するものと解するのが相当である。したがって、原告は、被告に対し、上記登記請求権に基づき、平成28年10月6日共有持分放棄を原因とする原告から被告への原告持分全部移転登記手続を求めることができる。」
この場合の共有持分放棄に対して,他の共有者は持分を放棄した者から取得した部分のみを放棄することによって引取登記義務を免れることはできない(東京地方裁判所平成28年6月8日判決)。
登記引取請求に関するもともとの判例は最高裁昭和36年11月24日判決,売買解除の事例。

       共有持分放棄の登記は可能だ!
備考
なお,単独所有者が国に対して所有権放棄を理由として登記引取請求訴訟を提起するとどうなるかまでは不明である。

以上による結論!!!

いらない土地の共有者が次々と放棄すると最終的には単独所有となる。
そこまでは登記ができる。
最終の単独所有者は放棄の登記ができない。

貧乏くじ
傾斜地,極小面積地,僻地,親父が原野商法で買わされた所有地が境界確定どころか場所の特定もできない,草ボーボーで人が入れず,鹿・熊しか使っていない,土壌汚染があり近隣から苦情がある,土砂崩れで近隣の住宅を破壊しそうだなど,使用価値がなく,売却もできないのに,固定資産税ばかりかかって困るという事態が生じる。地方公共団体に寄付しようとしても引き取ってくれない。
特に遺産分割で,価値のないものは共有とすることがあるが,分割協議後,あるいは分割調停後,時機を見て放棄すべきである。

参考文献
我妻栄 有斐閣 物権法121,248頁 
小倉馨 「土地の所有権の放棄の登記手続について」法曹746号 (2012.12)
小倉馨 「土地所有権の放棄に関する一考察」民事法務354号(2013.11)
小森谷祥平 「不動産登記実務からの土地所有権放棄論」登記情報 55巻7号 (2015.7)

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