身元保証

息子・娘が会社に損害を与えたことについて,身元保証人である親のあなたが会社から損害賠償請求をされているケースで,考えるべきこと

目次
身元保証の意義
身元保証の機能
民法改正との関係・・・注意1
身元保証人の賠償金額・・・注意2
身元保証契約の期間・・・注意3
通知義務・特別解約権・・・注意4

(身元保証の意義)
身元保証とは従業員の行為によって会社が損害を受けた場合,会社に損害を賠償してもらうために行う契約

契約するのは従業員ではない親などを身元保証人として身元保証人と企業が保証契約をします。

(身元保証の機能)
たとえば従業員が会社応接室の高額な美術品を必要がないのに手に取って見ていて,過失で壊してしまった場合,会社は従業員に損害賠償すればよいのですが,その従業員が無一文の場合,実際には賠償金が取れないことがあります。そのようなときに身元保証人から取れるようにするために身元保証は契約されます。
そうなったら従業員は身元保証人に迷惑をかけるので,不正行為をしにくくなるという従業員の心理も身元保証の効果です。

(民法改正との関係)
これまでは従業員が企業に損害を与えた場合,従業員の損害賠償義務について身元保証人がその一切を保証する,というのがオーソドックスな身元保証契約の内容でした。
民法改正で,それでは無効になります。
身元保証のようなあれやこれやの損害を広くカバーする保証を「根保証」といいます。今度の民法改正で,個人が根保証をする場合は,極度額という最高額を定めなければ,無効という規定が設定されました。2020年の4月1日からの民法になります。
先ほどの保証の例だと金額が全く出てきませんから保証が全て無効です。
民法上有効な身元保証契約を締結するとすれば、「従業員が企業に損害を与えた場合,従業員の損害賠償義務について身元保証人が〇〇円を限度としてその一切を保証する亅という契約内容になります。極度額を有効要件としたのは,個人の保証人が被る損害を予測して,保証契約するかどうかを慎重に判断させるためです。

注意1
  したがって,会社から損害賠償請求された身元保証人は,身元保証契約が民法の要求する極度額明記の要件を満たしているかどうか確認してください。

(身元保証人の賠償金額)
会社の損害が発生しても身元保証人が支払わなければならない金額は裁判所が定めます。会社の請求金額そのままを支払わなければならないのではありません。
身元保証法第5条
 裁判所ハ身元保証人ノ損害賠償ノ責任及其ノ金額ヲ定ムルニ付被用者ノ監督ニ関スル使用者ノ過失ノ有無,身元保証人ガ身元保証ヲ為スニ至リタル事由及之ヲ為スニ当リ用ヰタル注意ノ程度,被用者ノ任務又ハ身上ノ変化其ノ他一切ノ事情ヲ斟酌ス

最後の「斟酌す」は考慮に入れるということですが,具体的に言うと身元保証人の賠償金額を減額するということです。

注意2・・・身元保証契約により会社から損害賠償請求されても減額交渉せよ,言うなりに払うのは損。最終的には支払い拒否して,訴訟覚悟。

(身元保証契約の期間)
保証期間を定めないと有効期間は3年となり,保証期間を定める場合は5年を限度とされます。
身元保証法1条
 引受,保証其ノ他名称ノ如何ヲ問ハズ期間ヲ定メズシテ被用者ノ行為ニ因リ使用者ノ受ケタル損害ヲ賠償スルコトヲ約スル身元保証契約ハ其ノ成立ノ日ヨリ三年間其ノ効力ヲ有ス但シ商工業見習者ノ身元保証契約ニ付テハ之ヲ五年トス
第2条 身元保証契約ノ期間ハ五年ヲ超ユルコトヲ得ズ若シ之ヨリ長キ期間ヲ定メタルトキハ其ノ期間ハ之ヲ五年ニ短縮ス

有効期間が過ぎると身元保証の効力がなくなります。
入社時だけ契約することも多いのではないでしょうか。

注意3・・・有効期間が定められていなければ3年過ぎると契約切れを主張すべし。

(通知義務・特別解約権)
身元保証契約
第3条 使用者ハ左ノ場合ニ於テハ遅滞ナク身元保証人ニ通知スベシ
 一 被用者ニ業務上不適任又ハ不誠実ナル事跡アリテ之ガ為身元保証人ノ責任ヲ惹起スル虞アルコトヲ知リタルトキ
 二 被用者ノ任務又ハ任地ヲ変更シ之ガ為身元保証人ノ責任ヲ加重シ又ハ其ノ監督ヲ困難ナラシムルトキ

第4条 身元保証人前条ノ通知ヲ受ケタルトキハ将来ニ向テ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得身元保証人自ラ前条第一号及第二号ノ事実アリタルコトヲ知リタルトキ亦同ジ

これは会社が身元保証人に頼りすぎないようにさせる規定です。建物の賃貸借契約でも裁判例でこれに準じた取扱いがされています。

会社が通知を怠ったときは身元保証人の責任はなくなるかどうかですが,この法律を作るときに責任がなくなるという条項の案がありましたが,立法時に削られた経緯があります。そうすると通知がされなかったことは裁判所が損害賠償金額の算定で斟酌することになるでしょう。

注意4・・・解約すべき時は解約せよ